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相続土地国庫帰属制度の負担金とは?計算事例や安く抑えるポイントを紹介

相続土地国庫帰属制度を利用したいけど、費用面に不安を感じているという方も多いのではないでしょうか。

相続土地国庫帰属制度は、不要な土地を国に引き取って貰える大変便利な制度ですが、利用には審査手数料や負担金が発生します。

本記事では、審査手数料や負担金の概要、金額や計算方法、費用を抑えるポイントを紹介します。費用の概要を知りたい方、できるだけ費用を抑えて制度を利用したいという方は、ぜひ参考にしてみてください。

相続土地国庫制度の審査手数料とは

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相続土地国庫帰属制度の利用には、審査手数料が必要です。審査手数料は、申請後に土地が制度に適合するかどうか、審査する際にかかる費用です。

審査手数料は土地1筆(※)につき14,000円となっており、申請後不承認となった場合は、返還されません。

※1筆:土地登記簿上の一個の土地をあらわす単位

相続土地国庫制度の負担金は高い?費用を解説!

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負担金は、相続土地国庫帰属制度の審査後、承認された場合に納める費用です。土地所有者が管理を免れる代わりに、国に生ずる管理費用として支払います。

負担金の金額は、土地の面積や種目、区域によって変わってきます。

法務省:相続土地国庫帰属制度の負担金

負担金の分類とは?分類別の金額を解説

負担金は、土地の種目や区域、面積に応じて金額が決定されます。土地の種目は「宅地」「田、畑」「森林」「その他」の4つに分類されます。

・宅地・・・面積に関わらず20万円(区域、用途によって例外あり)

・田、畑・・・面積に関わらず20万円(区域、用途によって例外あり)

・森林・・・面積に応じ算定

・その他(雑種地・原野等)・・面積に関わらず20万円

なお正式に公表はされていませんが、負担金は、引き取ってもらう土地「1か所あたり20万円」にする方針と言われています。(地続きの2筆であれば、2筆でも20万円。隣接していなければ、近所であっても20万円×2筆で40万円。これも物件により判断されます)

負担金の例外についての算定方法

負担金は、森林以外の種目であれば原則20万円となっていますが、区域や用途で例外があります。

ここでは、負担金の例外、および森林の負担金の算定方法を解説します。相続土地国庫帰属制度を利用する場合は、その他の処分方法と費用を比較し、どの方法が安いのかを検討しましょう。

宅地

宅地は、都市計画法の市街化区域(※1)、または用途地域(※2)の指定がある場合に、面積に応じて算定されます。条件に該当する土地の場合は、最低でも208,000円以上の負担金が加算されます。

面積区分負担金額
50m2以下国庫帰属地の面積に4,070 (円/m2) を乗じ、 208,000円を加えた額 
50m2超100m2以下国庫帰属地の面積に2,720 (円/m3)を乗じ、 276,000円を加えた額
100m2超200m2以下国庫帰属地の面積に2,450 (円/m3) を乗じ、 303,000円を加えた額 
200m2超400m2以下国庫帰属地の面積に2,250 (円/m3) を乗じ、 343,000円を加えた額
400m2超800m2以下国庫帰属地の面積に2,110 (円/m2)を乗じ、 399,000円を加えた額
800m2超国庫帰属地の面積に2,010 (円/m3) を乗じ、 479,000円を加えた額

※1・・市街化区域とは、すでに市街地を形成している区域又はおおむね10年以内に優先的かつ計画的に市街化を図るべき区域をいいます(都市計画法(昭和43年法律第100号)第7条第2項)

※2・・用途地域とは、都市計画法における地域地区の一つであり、住居・商業・工業など市街地の大枠としての土地利用が定められている地域をいいます(都市計画法第8条第1項第1号)

田・畑

田・畑は、特定の区域、地域内にある場合に、面積に応じて負担金が算定されます。条件に該当する土地の場合は、最低でも208,000円以上の負担金が加算されます。

田・畑で面積に応じた算定が行われる区域・地域
・都市計画法の市街化区域、または用途地域の指定がある地域内の農地
・農業振興地域の整備に関する法律の農用地区域内の農地
・土地改良事業等又は準ずる事業等の施行区域内の農地は面積に応じた算定

面積区分負担金額
250m2以下国庫帰属地の面積に1,210 (円/m3) を乗じ、 208,000円を加えた額 
250m2超500m2以下|国庫帰属地の面積に850 (円/m3) を乗じ、 298,000円を加えた額
500m2超1,000m2以下国庫帰属地の面積に810 (円/m3) を乗じ、 318,000円を加えた額 
1,000m2超2,000m2以下国庫帰属地の面積に740 (円/m3) を乗じ、 388,000円を加えた額
2,000m2超4,000m2以下|国庫帰属地の面積に650 (円/m3) を乗じ、 568,000円を加えた額
4,000m2超国庫帰属地の面積に640 (円/m3) を乗じ、 608,000円を加えた額

森林

森林の場合は、区域や地域の指定はありませんが、面積に応じて負担金が増額されます。また、面積に関わらず、210,000円以上の負担金が必要となります。

面積区分負担金額
750m2以下国庫帰属地の面積に59 (円/m3) を乗じ、 210,000円を加えた額
750m2超1,500m2以下|国庫帰属地の面積に24 (円/m2)を乗じ、 237,000円を加えた額 
1,500m2超3,000m2以下国庫帰属地の面積に17 (円/m2)を乗じ、 248,000円を加えた額 
|3,000m2超6,000m2以下国庫帰属地の面積に12 (円/m3) を乗じ、 263,000円を加えた額
6,000m2超12,000m2以下国庫帰属地の面積に8(円/m3)を乗じ、 287,000円を加えた額
12,000m2超国庫帰属地の面積に6(円/m2)を乗じ、 311,000円を加えた額

相続土地国庫帰属制度を使えない土地とは!?

相続土地国庫帰属制度は、大変便利な制度ですが、全ての土地で利用できるわけではありません。建物がある土地や担保権が設定されている土地、境界がはっきりしていない土地などは対象外となります。

対象外となる土地の場合は、申請をしても却下されます。制度の利用を検討する場合は、書類作成などの手間を避けるために、まず法務局に相談をしたうえで申請をすることをおすすめします。

参考:法務省「相続土地国庫帰属制度において引き取ることができない土地の要件」

負担金、審査手数料以外に必要な費用は

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相続土地国庫帰属制度を利用する場合は、負担金や審査手数料以外にも、書類作成費用などが発生します。全体の費用を把握するためにも、その他に必要な費用を把握しておきましょう。

書類の準備費用

相続土地国庫帰属制度には、様々な書類の準備が必要となります。登記事項証明書や登記簿謄本、場合によっては、地図、公図、土地の現況がわかる画像といった書類が必要となり、それぞれに取得の費用がかかります。

司法書士等への依頼費用

申請書類の作成を専門家に依頼する場合には、その費用も負担する必要があります。相続土地国庫帰属制度の書類は、弁護士、司法書士、行政書士のみに依頼が可能となっています。

費用については、制度が始まってまもないということもあり、料金設定にばらつきがありますが、概ね10万円~30万円程度が相場となっています。

境界線確定費用

土地の境界線が曖昧な場合は、確定測量を行うなど、土地の境界線を明確にする必要があります。確定測量の費用は、土地の面積によっても異なりますが、30万円~80万円程度が相場となっています。

ただし実際の現場では、境界杭などが無い場合でも、確定測量が必須ではない場合があります。

例えば、隣人と境界の争いがない場合は、法務局等の担当部署から隣地所有者に対し「境界位置に疑義はないか」といった質問状を送り、異議の申し立てがなければ審査を通過するケースもあるようです。これらも含め、まずは法務局へ相談するのがよいでしょう。

また、土地が遠方にある場合は、境界線が曖昧かどうかを現地まで確認しにいく費用や手間が必要になります。

費用を抑えて相続土地国庫制度を利用するポイントは

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相続土地国庫帰属制度を利用したいと思っても、費用が高額になると考えると、利用が難しくなってきます。ここでは、費用を抑えるためのポイントを紹介します。

法務局に事前相談する

費用を抑えたい場合は、法務局に事前相談することをおすすめします。事前相談をすることで、審査に通る土地かどうかを判断し、審査手数料を払っても承認されない、書類を準備しても申請できないといった無駄を抑えることができます。

書類作成を自分で行う

少しでも費用を抑えたい場合は、申請書類の作成を自分で行うといいでしょう。

また、登記事項証明書などの必要書類も自分で準備することで、費用を抑えることが可能です。不動産取引の経験があるなど、書類作成に慣れている場合は、自分で準備することも考えてみましょう。

負担金算定特例を利用する

負担金算定特例を利用すると、負担金を安く抑えることができます。負担金算定特例とは、隣接している2筆以上の土地の場合、土地を1つの土地とみなして負担金を算定できる制度です。

利用には、負担金算定特例の申請書の提出が必要です。まず制度を利用できるかどうかを、最寄りの法務局に相談してみましょう。

その他の処分方法も検討する

相続土地国庫帰属制度は、条件に該当する土地しか使えず、場合によっては処分費用が高額になってしまう場合があります。費用が高額になることが見込まれる場合は、その他の処分方法も検討しましょう。

土地の処分方法には、自治体への寄付や不動産業者への依頼、有料で不要な土地を引き取ってくれる引取業者の利用など、様々な方法があります。

特に普段から不動産取引に慣れていないという場合は、手間なく確実に処分ができる引き取り業者への依頼がおすすめです。

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まとめ

本日は、相続土地国庫帰属制度の負担金、審査手数料など費用について解説しました。相続土地国庫帰属制度を利用する場合は、費用や手間も考慮する必要があります。

場合によっては、制度を利用する方がかえって費用も手間もかかってしまうこともあります。本記事を参考に、ご自分の不動産にとって最適な方法を選択しましょう。