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相続負動産のキホン

家あげます!空き家を処分するための方法やリスクを専門家が徹底解説

相続等で不要な家を手にすることになり、ただでもいいから家を処分したいという方が増えています。活用ができない空き家を所有すると、税金や維持管理の負担を負うことになるため、できるだけ早く処分したいものですが、不動産の知識がない方にとって、空き家を処分することは簡単ではありません。

そこで本記事では、空き家の処分を考えている方のために、家を譲渡する場合の注意点や税金について、譲渡が難しい場合の処分方法について解説します。

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家をただであげます!無償譲渡が起こる理由は

家をただであげます!無償譲渡が起こる理由は

「家をあげます」といった無償譲渡が行われる理由は、空き家の活用方法がなく困っているというものがほとんどです。相続等で空き家を手にしたものの、老朽化していて賃貸にも出せず、売却しようにも買い手がつかない「負動産」と化してしまっているなどのケースです。

こういった空き家は、所有しているだけで固定資産税や維持管理費の負担が重くのしかかります。そのため、「無償でもいいから誰かにもらってほしい」と考える所有者が増えています。

家の無償譲渡にかかる税金とは

家の無償譲渡にかかる税金とは

家を無償譲渡する場合に注意したいのが税金です。譲渡する側には基本的に税金がかかりませんが、譲渡される側には税金がかかる場合があります。

無償譲渡の場合の一般的な税金の考え方

売主買主
個人から個人非課税贈与税
個人から法人所得税法人税
法人から個人法人税所得税
法人から法人法人税法人税

また、個人から法人に譲渡する場合には、無償でも税金がかかってしまう場合があります。税金については、不動産の価値等によっても異なってくるため、税理士などの専門家に確認しておくと安心です。

家あげます!譲渡する場合の注意点とは

家あげます!譲渡する場合の注意点とは

無償譲渡であっても、空き家の取引は不動産取引となるため、様々な手続きなどが発生します。ここでは、無償譲渡を円滑に進め、損をしないための注意点について解説します。

譲渡先が見つからない可能性

空き家の譲渡を検討する場合、譲渡先が見つからない可能性があります。所有者も無償譲渡を考える物件は、不動産会社に相談しても売却を断られてしまう物件も多く、そのような物件は無償でも譲渡が難しい可能性が考えられます。

そのため、相続等の関係で処分までの期限があるという場合は、はやめに譲渡先探しを始めるようにしましょう。

契約書を作成する

不動産取引の場合は、無償譲渡であっても必ず書面で契約書を作成するようにしましょう。口約束でも契約は成立しますが、後々のトラブルを防ぐためにも、契約書を作成しておくと安心です。契約書には、不動産を譲渡する時期や方法、土地にある倉庫など残置物の取り扱い、譲渡後に瑕疵があった場合にどうするかといった項目を記載します。

不動産取引には専門的な知識が必要なため、司法書士等の専門家にも確認してもらうと安心です。

税金がかかる可能性を考える。

不動産取引において必ず把握しておきたいのが税金です。家の無償譲渡の場合、譲渡される側は手数料や税金も含め、無料で家を貰えると考えている方もいるため、税金の説明がないままに取引が行われると、トラブルになる可能性があります。

固定資産税評価額が基礎控除の110万円を超えてくる場合は、贈与税や不動産取得税がかかってくる可能性があります。取引の際は、相手に税負担が発生する場合があることを事前に伝えたうえで手続きを進めることが重要です。

いらない家を放置しておくと起こるリスクとは

いらない家を放置しておくと起こるリスクとは

持ち主も無償譲渡を考えるような家の場合、譲渡先がみつからないケースもあります。そのような場合、空き家のまま放置しているという方も少なくありません。しかし、空き家のまま放置すると、様々なリスクが発生します。

金銭的リスク

家の放置でまず注意したいのが、金銭的なリスクについてです。不動産は、例え収益をあげていなくても、所有している限り固定資産税などの税金が課税されます。管理不全により自治体から「特定空家」に指定されると、税額が最大で6倍に跳ね上がる可能性があります。

また、老朽化により外壁が倒壊する、庭木が敷地外に伸びるなど、所有している不動産が原因で通行人に損害を与えた場合、損害賠償を請求される可能性があります。

対人関係のリスク

空き家の管理を怠ると、近隣住民との関係や家族・親族間の関係が悪化するリスクがあります。例えば、雑草が生い茂って害虫や獣害を引き起こし、近隣住民からのクレームに繋がることがあります。

また、処分をしないままに空き家が子や孫に引き継がれてしまうと、親族や家族間で不要な空き家の押し付け合いに発展する、権利関係が複雑になり処分が困難になるなど、トラブルの原因になってしまいます。

犯罪に巻き込まれるリスク

管理されていないと周囲から思われた空き家は、最悪の場合、犯罪のターゲットにされてしまう可能性があります。管理不足により荒れた土地は、不法投棄の標的になります。また、放火や不審火が発生したり、敷地内に不法侵入されるといったリスクがあります。

最悪の場合は、知らないうちに犯罪現場に利用されてしまい、警察からの連絡を受けることになったり、地域の治安を悪化させるといった損害をもたらします。

家を無償譲渡するためのポイントとは

家を無償譲渡するためのポイントとは

所有者もいらないと考えるような家は、無償譲渡先がなかなか見つからないこともあります。ここでは、譲渡先が見つからない場合に、譲渡しやすくするためのポイントを紹介します。

更地にする

立地がいいなど条件がいいのに引き受け手が現れない場合は、更地にすることも検討しましょう。家が老朽化していたり、倉庫などが建っている場合、貰い手にとっては解体費用が負担となるため、譲渡を受けづらくなります。

立地などもよく条件がいい不動産のはずなのに、譲渡先がみつからないという場合は、更地にしてみることも選択肢として考えてみましょう。なお、空き家を解体すると固定資産税が増額となる場合があるため、解体前に税理士等の専門家に一度相談してみることをおすすめいたします。

法的な制限を解除する

不動産が法的な制限を受けている場合、譲渡することはかなり難しくなります。例えば、土地に担保権が設定されている、地目が農地で農地法の制限を受けている、市街化調整区域になっていて開発できない、建築基準法の制限などで建物の建て替えができないなど、法律で活用が制限されている不動産は、譲渡先も見つかりづらくなります。

農地転用を行うなど、法的な制限を解除できる可能性がある場合は、制限を解除することで売れやすくなる可能性があります。

土地についての調査を行う

土地の調査を行うことも、土地を譲渡しやすくするためにおすすめの方法です。たとえば土壌汚染があるなど、土地に一定の瑕疵がある場合、買主からは敬遠される可能性が高いです。また最近では反社会的勢力に使われていた土地なども引き受け手にとってはリスクにとられる場合もあります。

そのため、地盤調査や地質調査を行ったり、測量で境界を確定させておく、土地所有者の履歴を調べておくなど、土地が安心できるものであること証明することで、買主にとっては買いやすくなります。

いらない家を処分するおすすめの方法とは

いらない家を処分するおすすめの方法とは

土地を無償譲渡しようとしても、なかなか引き受け手が現れない場合は、土地を処分することも検討しましょう。ただし、不動産取引の知識がないと、不動産を処分することは難しいです。ここでは、いらない家を処分するために使えるおすすめの方法を紹介します。

空き家バンクに登録

空き家バンクは、主に自治体が運営している、空き家を譲渡したい人と、空き家を貰いたい人をマッチングさせるサービスです。空き家バンクを利用することで、不要な家の譲渡先を見つけられる場合があります。

ただし、譲渡先が見つからない可能性があることや、すべての自治体にあるわけではない点、自治体の発信力が弱いと機能しない点に注意しましょう。

自治体に寄付

自治体によっては、土地の寄付を受け付けている場合があります。もし寄付が成立すれば、所有権が自治体に移り、固定資産税や管理の負担から解放されます。

注意点として、自治体への寄付は活用見込みのない土地は引き取って貰える可能性が低いです。公園や公共施設などに活用できるような条件の良い土地でなければ、寄付を断られてしまう場合があります。

相続土地国庫帰属制度

相続または遺贈によって不動産を取得してしまった場合、相続土地国庫帰属制度を利用できる可能性があります。相続土地国庫帰属制度は、有償で一定の要件を満たした土地を、国に引き取ってもらう制度です。空き家など建物がある場合は対象外となるため、利用をする場合は、あらかじめ家屋の解体が必要となる点に注意しましょう。

審査手数料がかかるほか、承認された場合は10年分の土地管理費相当額の負担金を納付する必要があります。審査手数料は、不承認となっても返還されないため、利用を検討する場合は、まずは最寄りの法務局等に問い合わせてみるといいでしょう。

有料引き取りサービスに依頼する

売却も寄付もできず、国庫帰属制度の要件も満たさない不動産の最終手段として、民間の不動産会社などが提供する有料引き取りサービスがあります。有料引き取りサービスの事業者は、不要な不動産の活用に独自のノウハウや知識があるため、他の方法で引き取ってもらえなかった場合でも引き取ってもらえる可能性があります。

サービスの利用は有償となりますが、税金や維持管理の負担を考えれば、出来る限り早めに手放した方が得をするケースがほとんどです。不要な家に困っているという方は、まずは無料相談をしてみることをおすすめします。

マッチングサイトを利用

最近では、土地のやり取りにマッチングサイトを使う人も増えています。マッチングサイトを使うことで、不動産会社に売却を断られるような土地でも、全国に向けて情報発信が可能です。マッチングサイトで広く情報発信ができれば、ニッチなニーズを持っている貰い手から連絡を貰える可能性があります。

マッチングサイトは、売買に関心が高い人が集まっているため、申し込みからの成約率が高いのも特徴です。要らない土地に困っているという方は、まずは登録だけでも済ませておくといいでしょう。

まとめ

本記事では、不要な家を所有していて家をあげたいと考えている方に向けて、譲渡の注意点や税金について、譲渡できなかった場合の処分方法等を紹介しました。いらない家に困っている方は、ぜひ参考にしてみてください。

監修者 監修者

株式会社KLC 代表 小林 弘典

幼少期から不動産が大好きな、自他共に認める不動産マニア。

不動産会社でも手を出せない不動産の専門会社「株式会社KLC」代表を勤め、
自身のYoutubeチャンネル「相続の鉄人」にて、負動産問題について啓蒙活動も実施。

  • 総務省 地方公共団体の経営・財務マネジメント強化事業登録アドバイザー
  • 空き家等低利用不動産流通推進協議会 理事
  • 立命館大学経済学部 客員講師
  • 不動産有料引取業協議会 代表理事

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