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土地を自治体に無償譲渡する方法とは?譲渡できなかった場合の対処法も紹介
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土地を自治体に無償譲渡する方法とは?譲渡できなかった場合の対処法も紹介

相続などで予期せず土地を取得したものの、活用する予定がなく、管理や税金の負担に頭を悩ませている方も多いのではないでしょうか。こういった資産価値がない不動産の処分方法の一つとして、「自治体への無償譲渡」という選択肢があります。

この記事では、不要な土地を自治体に無償譲渡(寄付)する方法や、断られやすい土地の特徴、無償譲渡ができなかった場合の具体的な対処法について、分かりやすく解説します。不要な土地の処分でお困りの方は、ぜひ参考にしてみてください。

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自治体に土地の無償譲渡はできる?

自治体に土地の無償譲渡はできる?

不要な土地は、自治体に引き取ってもらうことができるのでしょうか。結論として、土地を自治体に無償譲渡することは可能です。無償譲渡することができれば、所有者は固定資産税の支払いや土地の維持・管理義務から解放されるため、不要な土地の対処方法として、自治体への無償譲渡は有効な選択といえます。

土地の寄付を受け付けてもらえない場合もある

ただし、自治体では土地の寄付を受け入れてもらえない場合もあります。自治体が土地の寄付を受け入れるのは、その土地に公共的な利用価値が見込める場合に限られます。例えば、周辺住民のための公園や、公用車の駐車場、施設の建設用地など、活用できる見込みがなければ、寄付を受け入れてもらうことは難しくなります。

自治体にとっても、活用できない土地は、固定資産税や管理コストがかかります。そのため、所有者にとっても不要だと思われるような土地の場合、寄付の申し出をしても、断られてしまうケースは少なくありません。

無償譲渡を断られやすい土地の特徴3選

無償譲渡を断られやすい土地の特徴3選

自治体への寄付を検討していても、自身の所有する土地が条件に該当するかどうかわからないという方も多いことでしょう。ここでは、特に寄付を断られやすい土地の特徴を3つ紹介します。

立地が悪い

立地が悪い土地は、無償譲渡を断られやすいです。市街地から離れていたり、道路に接道していないなど、アクセスの悪い土地は活用が難しいため、寄付を断られる可能性が高くなります。

自治体が公共施設等を建設する場合、住民の利便性も考慮する必要があるため、民間での利用も見込めないような土地は、自治体にとっても活用が難しく、引き取りの対象から外れやすくなってしまいます。

土地の形が特殊

土地の形状が特殊な場合も、寄付を受け入れてもらうのは難しくなります。例えば、細長い土地や、いびつな形をしている不整形地は、建物を建てたり駐車場にしたりといった一般的な活用が困難です。

また、傾斜があって建物を建てるには造成が必要など、整備に多額の費用がかかる不整形地は、自治体にとっても受け入れるメリットがないため、断られる可能性があります。

災害リスクがある

土砂災害特別警戒区域(レッドゾーン)や急傾斜地、標高が低い低地など、自然災害のリスクが高い土地も、寄付を断られる可能性が高いです。

こういった土地は、安全に利用するための対策に莫大な費用がかかるだけでなく、建物の建築が制限されている場合も少なくありません。万が一災害が発生した場合、自治体が管理責任を問われる可能性もあるため、災害リスクを抱えている土地は対象から外れてしまうケースがほとんどです。

自治体に土地を無償譲渡する手順とは

自治体に土地を無償譲渡する手順とは

実際に土地を自治体に無償譲渡したい場合、どのような手順で進めれば良いのでしょうか。ここでは、一般的な無償譲渡の手続きの流れを5つのステップに分けて解説します。
(具体的な手続き等は各自治体によって異なります)

1. 自治体窓口に相談

土地の無償譲渡を検討する場合は、まず所在地の市役所や町役場の担当窓口に相談してみましょう。総務課や管財課、財産管理課といった部署が担当していることが多いですが、自治体によって名称は異なります。

担当部署が不明な場合は、事前に問い合わせたうえで、担当部署を確認しておくとスムーズです。相談の際は、土地の所在地や面積、現状などが分かる資料(登記簿謄本や公図など)を持参すると、話が具体的に進めやすくなります。

2. 情報提供

担当部署との相談で、寄付の可能性があると判断された場合、土地に関するより詳細な情報提供を行います。なぜ土地を寄付したいのかという理由や、土地の利用履歴や権利関係などを聞かれる可能性があります。

また、場合によっては登記謄本や測量図、写真等といった書類の提出を求められる場合もあります。情報をもとに、自治体側で受け入れの可否についてより具体的な検討が行われます。

3. 調査

情報提供で対象となる可能性があると判断されると、自治体の担当者による現地調査や法務局での権利関係の調査など、本格的な審査が行われます。現地調査では、土地の現況、境界線の確認、周辺環境、管理状態などが細かくチェックされます。

また、土地に抵当権が設定されていないか、所有権に関する争いがないかなど、法的な側面についての調査なども行われます。この調査結果によって、寄付を受け入れるかどうかが最終的に判断されます。

4. 必要書類の提出

自治体の審査を無事に通過し、寄付の受け入れが決定したら、所有権を移転するための手続きに進みます。また、自治体から指示された必要書類を準備し、提出します。一般的に必要となる書類は、

・寄付申出書
・登記事項証明書
・所有権移転登記承諾書
・公図
・境界確定図
・固定資産税評価証明書

などですが、土地や自治体によっても異なる点に注意しましょう。

5. 所有権移転

全ての必要書類を提出し、自治体側での準備が整うと、法務局で所有権移転登記の手続きが行われます。登記手続きは、原則として自治体が行います。登記が完了し、登記簿上の所有者名義が自治体に変更されれば、寄付の手続きは全て完了となります。

自治体に無償譲渡を受け入れてもらえる土地の条件とは

自治体に無償譲渡を受け入れてもらえる土地の条件とは

不要な土地があった場合、自治体に寄付する方法は、安全に土地を処分できる方法のひとつです。ここでは、自治体に受け入れてもらいやすい土地の条件を紹介します。

土地に建物がない

土地に建物がない場合は、自治体側でも受け入れやすくなります。反対に、古い家屋や倉庫などが残っている場合、自治体側で解体費用を負担しなければならず、断られてしまう可能性があります。

もし建物が残っている場合は、寄付を申し出る前に所有者側で解体し、更地にしておくことが望ましいです。また、樹木や雑草等の伐採も行っておくと、受け入れられる可能性も高くなります。

一定の広さがある

一定の広さがある土地の場合は、寄付の対象となりやすいです。自治体で土地を活用する場合は、公共施設の建設用地にするなど、まとまった広さが必要です。

狭い土地では活用方法が限られてしまうため、寄付を受け入れてもらうのは難しくなります。ただし、広くても形状が悪かったり、傾斜がある場合は、避けられてしまう場合もあるため注意しましょう。

管理がしやすい

自治体が引き取った後、管理に手間や費用がかからないことも重要です。例えば、土壌汚染がされている可能性があったり、樹木が多数生い茂っており伐採の必要があるといった場合、調査や管理に多額の費用がかかるため敬遠されがちです。

土地が更地で、地盤も安定しているなど、管理がしやすい土地であれば、立地等が悪くても受けいれて貰える可能性が高まります。

寄付を断られた土地を放置していると起こるリスクとは?

寄付を断られた土地を放置していると起こるリスクとは?

自治体への寄付を断られ、活用する方法もみつからないといった場合、土地をそのまま放置しておこうと考える方もいるかもしれません。しかし、不要な土地を放置していると、様々なリスクを負うことになります。

税金や損害賠償

土地を所有していると金銭的なリスクを負うことになります。土地を所有している限り、毎年固定資産税が課せられます。また、土地の管理を怠った結果、第三者に損害を与えてしまった場合、所有者として損害賠償責任を問われる可能性があります。

例えば、老朽化によりブロック塀が倒れて通行人が怪我をしたり、樹木が伸びて通行人の進路を妨害し、事故が発生した場合、土地の所有者が責任を負う必要があります。

対人トラブル

管理されていない土地は、対人トラブルを引き起こす可能性があります。土地を放置することで、雑草が繁殖し害虫や獣害の発生源となり、近隣住民から苦情をいれられる原因となります。土地が荒れて境界が曖昧になってしまい、隣地所有者との間で境界線をめぐる争いが起こる可能性もあります。

また土地を処分しないままに子や孫に引き継がれてしまった場合、権利関係が複雑になり処分は困難となる、土地の押し付け合いが発生するといったトラブルの可能性があります。

犯罪に巻き込まれる

周囲から管理が行き届いていないと思われた土地は、犯罪の温床となってしまう可能性があります。例えば、粗大ゴミや産業廃棄物の不法投棄をされたり、空き巣や放火のターゲットにされるリスクがあります。

最悪の場合は、所有する土地が知らない間に犯罪に使われてしまい、所有者として警察の捜査に協力する必要が出てくるなど、思わぬ形で犯罪に巻き込まれてしまうリスクが高まります。

土地を無償譲渡できなかった場合に使える処分方法とは

土地を無償譲渡できなかった場合に使える処分方法とは

土地を無償譲渡できなかった場合、不要な土地を処分する方法がわからないという方も多いかもしれません。不動産の知識が乏しい所有者の場合は、資産価値がない不動産を活用したり、手放すことは簡単ではありません。ここでは、初心者でも取り組みやすいおすすめの処分方法を紹介します。

不動産会社に依頼

不要な土地がある場合は、まず不動産会社に相談してみましょう。不動産会社に依頼する方法には、買主を探してもらう仲介と、不動産会社自身に直接買い取ってもらう買取があります。

仲介は、希望価格で売れる可能性がある一方、時間がかかる場合があります。買取は、価格が市場より安くなる傾向がありますが、すぐに処分できるのがメリットです。土地の状況に合わせて、最適な方法を検討しましょう。

相続土地国庫帰属制度を利用

相続または遺贈によって取得した土地の場合は、相続土地国庫帰属制度を利用して、国に土地を引き取ってもらう方法もあります。相続土地国庫帰属制度は、一定の要件を満たす土地について、審査手数料と管理費相当額の負担金を納付することで、土地の所有権を国に移すことができる制度です。

ただし、引き取りには条件があり、不承認となった場合も審査手数料は返還されないため、事前に法務局等に相談のうえ検討してみましょう。

隣人に譲渡する

土地の処分方法として、隣人に譲渡するといった方法もあります。隣人にとっては、敷地が広がることで土地を活用する幅が広がり、土地の価値があがる可能性があるといったメリットがあります。連絡先がわからない場合は、法務局で登記謄本を取得し、手紙をだすことで連絡をとることができます。

個人間の取引となるため、後々のトラブルを避けるためにも、契約書の作成などは専門家に依頼することをおすすめします。

有料引取サービスに依頼

最近では、不要な土地の処分に専門の有料引き取りサービスを利用するという方も増えています。有料引き取りサービスは、所有者が費用を支払うことで、不要な土地を引き取ってもらうサービスです。

税金や管理コストを払い続けることを考えれば、不要な土地の引き取りは有効な選択肢の一つとなります。ただし、中には悪質な業者も存在するため、依頼する際は複数の業者を比較検討するなど、信頼できる会社を選ぶことが重要です。

マッチングサービスを利用

不要な土地の処分には、土地のマッチングサービスも有効な手段です。マッチングサービスは、土地を買いたい人と売りたいを繋ぐプラットフォームです。土地の情報を全国に発信することで、不動産会社に依頼しても買い手がつかないような土地でも、買い手が見つかる可能性があります。

マッチングサービスは、土地の売買に関心が高い人が集まっているため、申し込みからの成約率が高いのも特徴です。不要な土地に困っているという方は、まずは登録だけでも済ませてみるといいでしょう。

まとめ

不要な土地の処分方法として、自治体への譲渡は有効な選択肢の一つです。しかし、自治体側にも受け入れの基準があるため、全ての土地が寄付できるわけではありません。土地の処分に困っているという方は、本記事を参考に、ぜひ最適な方法を探してみてください。

監修者 監修者

株式会社KLC 代表 小林 弘典

幼少期から不動産が大好きな、自他共に認める不動産マニア。

不動産会社でも手を出せない不動産の専門会社「株式会社KLC」代表を勤め、
自身のYoutubeチャンネル「相続の鉄人」にて、負動産問題について啓蒙活動も実施。

  • 総務省 地方公共団体の経営・財務マネジメント強化事業登録アドバイザー
  • 空き家等低利用不動産流通推進協議会 理事
  • 立命館大学経済学部 客員講師
  • 不動産有料引取業協議会 代表理事

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