不要な山林や農地など、収益価値がない土地を相続することになり、困っている方も多いのではないでしょうか。不要な土地を相続することは、維持・管理義務が発生したり、税金を支払う必要があるなど、大きな負担となります。
本記事では、不要な土地を相続放棄する方法や、相続放棄が出来なかった場合の対処法など、不要な土地を手間なく処分するために役立つ情報を紹介します。
土地だけを相続放棄することはできない
相続をする際に、不要な土地を相続したくないと考える方は多いでしょう。しかし、不要な土地のみを相続放棄することはできません。相続をする場合は、不要な土地だけでなく、故人の現金、銀行預金や株式なども含め、全ての財産を相続する必要があります。
そのため、相続する財産に不要な土地がある場合は、土地も含めて相続放棄をするか、相続後に土地を処分するといった対処をとる必要があります。
相続放棄できない場合の対処法とは
やむを得ず不要な土地を相続した場合は、相続人に名義変更した後、土地を処分する必要があります。しかし、不動産取引に慣れていない人にとっては、処分するのも大変な労力になります。また、どういった処分方法がいいのか判断が出来ないという方も多いことでしょう。
ここでは、相続放棄が出来ない場合にできる、おすすめの対処方法について紹介します。
不動産会社に買取・仲介の依頼
不要な土地の処分方法として、不動産会社に買取、または仲介を依頼する方法があります。買取や仲介は、場合によっては売却益を出せる可能性があります。
ただし、買取や仲介の場合、買い手が現れずに土地が売れない、そもそも土地を買い取って貰えない場合があるなど、土地を確実に処分出来るわけではない点に注意しましょう。
相続土地国庫帰属制度の利用
相続土地国庫帰属制度を利用し、国に土地を引き取ってもらうことも有効な処分方法の一つです。相続土地国庫帰属制度は、2023年4月よりスタートした新しい制度で、相続や遺贈によって所有することになった土地が対象です。
注意点として、相続土地国庫帰属制度は対象となる土地が限定されており、処分に費用がかかるデメリットがあります。
マッチングサービスの利用
不要な土地の処分は、マッチングサイトの利用も有効な手段です。マッチングサイトは、全国どこからでも利用可能で、土地の売買に関心が高い人が集まっており、高い成約率が期待できます。
マッチングサイト利用の注意点として、サイトによっては手数料がかかる場合があるので、利用するサイトに手数料が必要かどうかを確認しておきましょう。
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引き取り業者の利用
引き取り業者を利用することで、不要な土地を引き取って貰うことができます。引き取り業者は、不要な土地の引き取りの専門家であり、不動産会社で取り扱って貰えない土地や、相続土地国庫帰属制度の対象外の土地であっても、幅広く引き取って貰える可能性があります。
引き取りについては、費用がかかる場合がありますが、その分手間なくすぐに土地を処分することができます。
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相続放棄の手続きとは
相続放棄をする場合は、三ヵ月以内に手続きを行う必要があります。しかし、相続放棄をしたいと思っても、何から始めたらいいのかわからないという方がほとんどではないでしょうか。ここでは、相続放棄の手続きについて解説します。
1.財産調査
相続放棄の手続きに入る前に、まず財産調査を行います。財産調査とは、故人の財産がどれくらいあったかを調査することです。
財産調査で調査する項目例
- 口座残高の確認(残高証明書の発行)
- 借金の有無、金額(信用情報機関への開示請求)
- 不動産の評価額(固定資産税の納税通知書)
- その他有価証券の有無、金額(証券保管振替機構に開示請求)
具体的には、通帳やキャッシュカードから口座残高を調べ、残高証明書の発行を依頼する。信用情報機関に開示請求を行い、借金の調査をする。固定資産税の納税通知書から不動産を調べる。証券保管振替機構に開示請求を行うなど、預金や借金の額、また不動産やその他有価証券等がどのくらいあったのかという点を調査します。財産調査を行うことで、相続放棄をした方がいいのか、それとも相続した方がいいのかといった判断がしやすくなります。
2.必要書類を準備する
財産調査が終わったら、相続放棄のために必要な書類を準備します。必要書類については、相続人の立場によっても変わりますが、今回は成人を例に説明します。成人の場合は、相続放棄申述書、戸籍謄本(全部事項証明書)、住民票を用意しましょう。場合によっては、財産目録が必要となることもあります。相続放棄申述書は、裁判所のホームページからダウンロードできます。
3.相続放棄の申述を行う
必要書類を準備したら、相続放棄申述書に記載を行い、家庭裁判所に提出しましょう。家庭裁判所は、故人の最後の住所地を管轄する裁判所となります。申述書は、持参または郵送で送付できますが、郵送の場合は、書類が到着した日が受理日となる点に注意しましょう。
4.照会書を返送
相続放棄申述書を提出すると、約1~2週間で照会書が家庭裁判所から送付されてきます。照会書は、相続放棄が真正のものか、自分の意思で行われているかを照会する書類となります。照会書の内容によっては、相続放棄が認められない場合もあるため、正確に記載し、返送期限内に送付するようにします。
5.相続放棄受理通知書の受け取り
照会書の返送も終わり、相続放棄申述書が受理されると、家庭裁判所から相続放棄受理通知書が送られてきます。相続放棄受理通知書は、簡易書留等、確認が必要な方法で送付されます。なお、再発行は出来ませんので、紛失しないように気を付けましょう。
6.次の相続人に土地に管理を依頼する
無事に相続放棄が完了したら、次の順位の相続人に報告し、土地の管理について相談するようにしましょう。相続放棄は、法的には告知する義務はありませんが、土地の管理義務については、次の相続人が管理するまで、管理義務が残る場合があります。そのため、相続放棄後は土地の管理についてしっかりと相談しておくことで、トラブルを避けることができます。
相続放棄のメリットは?
不要な土地を相続する可能性があり、相続放棄をしたいと考えた際に、放棄した方がいいのかわからないという方も多いのではないでしょうか。ここでは、相続放棄することのメリットについて解説します。
土地の管理義務がなくなる
相続放棄をすると、土地の管理義務がなくなるメリットがあります。相続した土地は、例え収益性がない土地であっても、管理義務が発生します。そのため、相続後にトラブルが起こった場合は、管理責任が問われます。
例えば、土地からはみ出した枝などが隣地に侵入したり、不法投棄され悪臭が発生しているといった場合には、対応する必要があります。もし相続した土地が遠方にあった場合は、大きな負担となります。相続放棄をすることで、こうした管理義務を負わなくなります。
税金の支払い義務から解放される
相続放棄をすると、税金の支払い義務から解放されます。固定資産税は、土地から収益が発生していなくても、名義人となっているだけで毎年支払い義務が発生します。例えば、荒れ果てた山林や農地など、今後も収益性が見込めない土地を所有している場合でも、支払う必要があります。相続放棄をすることで、税金の支払い義務からも解放されます。
債務の支払いを負わない
相続放棄をすると、相続財産の債務の支払いを負わなくなります。相続をした場合は、全ての財産を相続する必要があります。そのため、被相続人故人が債務を負っていた場合は、その支払い義務が相続人に発生します。
相続放棄をすれば、当然債務の支払い義務は発生しません。
相続放棄のデメリット
相続放棄することは、不要な土地を手放したいという方には最適な手段ですが、デメリットもあります。
財産を相続できない
相続放棄をすると、全ての財産を相続できなくなります。例えば現預金や株式といった財産があった場合でも、相続放棄をした場合は一切の財産を受け取ることができません。
相続放棄をした場合は、不要な土地や負債を負わない代わりに、その他の財産も手放すことになります。
三ヶ月以内に行使する必要がある
相続放棄は、相続を知った日から三ヵ月以内に行使する必要があります。例えば、相続を放棄するかどうか考えている間に、三ヵ月を過ぎてしまったら相続放棄自体をすることが出来なくなります。
相続放棄は、不要な土地などを相続したくない場合には便利な制度ですが、期限がある点を把握しておきましょう。
管理義務が残る場合がある
相続放棄を行った場合でも、土地の維持、管理義務が残る場合があります。民法940条には、財産を現に占有している時、財産を引き渡すまでの間は、管理しなくてはいけないと定められています。
占有とは、対象を支配下においている状態をさします。例えば、土地を物置として利用していたなど占有状態とみなされた場合は、次の相続人に引き渡すまで、管理義務を負うことになります。
不要な土地を手放したくて相続放棄を検討している場合、占有の要件にあてはまっていないかを確認しておきましょう。
相続放棄をした方が得するケースとは
相続の際に、不要な土地が含まれていると、相続放棄をした方がいいのか、しない方がいいのかと迷ってしまう場合もあるでしょう。
ここでは、相続放棄をした方が得するケースについてお伝えします。相続放棄した方がいいかは、どちらが得をしたいか、またはトラブルを避けたいかなどを基準に考えるようにします。
例えば、土地の処分費用を考えた場合、相続をしても損をする時は、相続を放棄した方がいいでしょう。また、多少相続財産の方が多くても、親族間の話し合いなどが辛いという場合は、相続放棄をすることでトラブルを避けることができます。
反対に、不要な土地の処分費用をさしひいても、残る財産が多いという場合は、相続後に土地を処分することをおすすめします。
まとめ
本記事では、土地の相続放棄についてのメリットやデメリット、不要な土地の処分方法について紹介しました。不要な土地のことでお困りの方は、本記事を参考に自分にあった処分方法を選んでいただければと思います。