【2026年10月最新版】相続土地国庫帰属制度が使えない?利用の条件や使えない場合の対処方法
親から土地を相続したものの、遠方にあって管理できない、使い道がなく売却も難しいといった悩みを抱える方は少なくありません。このような土地は、収益を生んでいなくても維持・管理が必要になり、固定資産税も発生するなど、所有者にとっては大きな負担となってしまいます。
こうした土地を手放す方法の一つが、相続土地国庫帰属制度です。相続土地国庫帰属制度は、相続で手にした土地を、国に引き取ってもらうことができる便利な制度ですが、土地の状態によっては使えないこともあります。
この記事では、相続土地国庫帰属制度が使えない土地の条件をはじめ、手続きにかかる費用、制度を利用できない場合の処分方法を解説します。
相続土地国庫帰属制度とは

相続土地国庫帰属制度は、相続または遺贈によって取得した土地を、一定の要件のもとで国に引き取ってもらうことができる制度です。2023年4月27日に始まり、制度の開始前に相続した土地も対象となります。
相続又は遺贈(遺言によって特定の相続人に財産の一部又は全部を譲ること)によって土地の所有権を取得した相続人が、一定の要件を満たした場合に、土地を手放して国庫に帰属させることを可能とする「相続土地国庫帰属制度」が創設されました。
引用:「法務省」相続土地国庫帰属制度の概要
制度を利用したい場合は、土地を管轄する法務局に申請が必要です。申請後、審査を経て承認後、30日以内に負担金を収めることで、土地の所有権を国に移転することができます。
相続土地国庫帰属制度が創設された背景は
制度が創設された背景には、相続した土地の管理負担や、所有者不明土地の増加があります。
利用する予定がなく、買い手も見つからない土地であっても、相続すれば所有者は維持・管理をしていく必要があります。そのため、土地の所有者となることを避け、適切に相続登記を行わなかったり、権利関係の複雑さなどを理由に登記がされず、所有者不明土地が増加するといった問題が発生していました。
相続土地国庫帰属制度は、一定の条件を満たす土地について国への引き渡しを認め、相続人の負担を減らすとともに、所有者不明土地や管理不全の土地の発生を防ぐために設けられました。
相続土地国庫帰属制度が使えない土地とは?詳しい条件を解説

相続土地国庫帰属制度では、国が引き取った土地を管理・処分する必要があります。そのため、管理や処分に費用や労力がかかる土地は、制度の対象から除外されています。
使えない土地の条件には、申請の段階で対象外となる「却下事由」と、申請後の審査で判断される「不承認事由」があります。
申請をすることができない土地(却下事由)
却下事由に該当する土地は、国庫帰属の承認申請ができません。主な条件は次のとおりです。
・建物がある土地
・担保権や使用収益権が設定されている土地
・他人の利用が予定されている土地
・土壌汚染がされている土地
・境界が明らかでない土地や、所有権の存否、範囲について争いがある土地
など
例えば、相続した実家の敷地に空き家が残っていると、却下となってしまいます。制度の利用を希望する場合は、建物の解体費用など制度利用のためにかかる費用と、維持・管理の手間や負担を比較して判断する必要があります。
承認を受けることができない土地(不承認事由)
申請ができる土地でも、実際の管理や処分に過分な費用・労力がかかると判断されれば、国庫帰属は承認されません。不承認事由には以下のような条件があります。
・一定の勾配・高さ(勾配30度以上かつ高さ5m以上)の崖があって、管理に過分な費用・労力がかかる土地
・土地の管理・処分を阻害する有体物が地上にある土地
・土地の管理・処分のために、除去しなければいけない有体物が地下にある土地
・隣接する土地の所有者等との争訟によらなければ管理・処分ができない土地
・その他、通常の管理・処分に当たって過分な費用・労力がかかる土地
など
例えば、急斜面の土地は、崖の高さや勾配だけでなく、周囲に被害を及ぼさないよう擁壁工事などが必要かどうかも審査されます。申請前に土地の現況や周辺との関係を整理しておくと、利用の見通しを立てやすくなります。
相続土地国庫帰属制度の最新の承認状況は?承認率は約半分!?

相続土地国庫帰属制度について、実際の申請状況や帰属数が法務省より公表されています。公開されている情報(令和8年9月30日時点)によると、申請総数は6,125件(現在審査中のものを含む)、うち帰属件数は3,231件となっており、承認率は約52%と半数は帰属していない状況となっています。
相続土地国庫帰属制度では、国がその後の土地の管理を行うため、不動産会社に売却できないような不動産の場合、制度の条件に該当しないというケースも少なくありません。申請には書類の準備や審査手数料が必要であり、却下・不承認となっても手数料は返還されません。そのため、申請前に土地の状態や制度の要件を十分に確認することが大切です。
参考:法務省「相続土地国庫帰属制度の統計」
却下・不承認事由以外で使えない理由は

国庫帰属の要件を満たしていても、所有形態や処分の条件によっては、相続土地国庫帰属制度の利用が最適でない場合もあります。ここでは、通常の条件以外で制度を使えない場合によくある理由を紹介します。
共有者全員の同意がとれない
共有名義の土地で相続土地国庫帰属制度を利用するには、共有者全員が共同で申請する必要があります。相続によって共有持分を取得した人がいても、その人だけで申請したり、自分の持分だけを国に引き渡したりすることはできません。
例えば、兄弟3人で相続した土地について、2人が国庫帰属を希望していても、残る1人が共同申請に応じなければ制度を利用できません。ただし、共有者の中に売買や贈与など、相続以外の方法で持分を取得した人が含まれていても、相続または相続人への遺贈によって持分を取得した人が1人以上いれば、共有者全員で共同申請することができます。
土地をすぐに手放す必要がある
相続土地国庫帰属制度は、申請後すぐに土地の所有権が国へ移る制度ではありません。法務局による書面調査や必要に応じた現地調査があり、審査の標準処理期間は8か月とされています。土地の状況によっては、さらに時間がかかります。
審査で承認されても、負担金を納付するまでは所有権が移りません。その間は申請者が土地を管理し続ける必要があります。
相続財産の整理を早く終えたい場合など、処分を急ぐ必要があるケースでは、対象地付近の不動産会社への売却相談や、不動産の有料引取サービスなどを提供している売却困難な不動産に特化した不動産会社へ相談するなど、別の方法も並行して検討するのが現実的です。
相続土地国庫帰属制度にかかる費用とは

相続土地国庫帰属制度は、国に費用を支払うことで、土地を引き取ってもらう制度です。申請時の審査手数料に加え、承認後には負担金を支払います。土地の状態によっては、申請前の整備費用なども必要です。ここでは、制度の利用にかかる費用について解説します。
審査手数料
申請の際は、審査手数料を支払う必要があります。審査手数料は、土地1筆につき14,000円です。「1筆」とは登記上の土地の単位で、例えば3筆の土地を申請する場合は42,000円かかります。
審査手数料は、申請を取り下げた場合や、却下・不承認となった場合でも返還されないため、制度の対象となりそうか、事前に法務局で相談するようにしましょう。
負担金
負担金は、審査で国庫帰属が承認された場合に納付する費用です。国が土地を管理するための10年分の標準的な費用を考慮して設定されており、原則として1筆20万円が必要になります。
ただし、市街化区域等にある宅地や一部の農地、森林では、土地の面積などによって20万円を超える金額が算定されます。隣接する複数の土地について、一定の条件を満たせば負担金をまとめて算定できる特例もあります。
負担金は、通知が到達した日の翌日から起算して30日以内に納付する必要があり、納付した時点で土地の所有権が国へ移ります。期限内に納付しなければ、承認は失効となってしまうため注意しましょう。
諸費用
制度を利用する際には、審査手数料と負担金以外にも費用が生じます。登記事項証明書などの書類取得費や郵送費のほか、土地の状況を調べるための調査費用が必要になることがあります。
建物が残っているなら解体費、管理の妨げとなる工作物や廃棄物があれば撤去費も考えなければなりません。境界の確認に専門的な調査が必要な場合には、測量などの費用がかかることもあります。
申請書類の作成を司法書士などの専門家に依頼する場合は、その報酬も発生します。特に建物の解体が必要な土地では、国庫帰属のための支出が大きくなるため、売却やほかの処分方法と費用を比較することが大切です。
制度が使えなかった土地を放置するリスクとは

相続土地国庫帰属制度を使えず、土地の処分先も見つからない場合、わざわざ土地を管理しようという方は少ないかもしれません。しかし、利用していない土地でも所有者であることに変わりはなく、管理の負担や責任は残ります。
例えば、敷地の樹木が隣家に倒れたり、管理不足で外壁が崩れて通行人などに被害を与えたりすると、状況によっては損害賠償責任を負うことがあります。草木が伸びて隣地に侵入して、近隣住民とのトラブルにつながるといったケースも考えられます。
また、人の出入りが少ない土地は、不法投棄や放火、不法侵入など、犯罪被害の対象になることがあります。収益も生まず使い道がない土地であっても、放置していると様々な面倒ごとに巻き込まれる可能性があります。
相続土地国庫帰属制度が使えない場合のおすすめの処分方法5選

国庫帰属が認められない土地でも、ほかの方法で手放せることがあります。ここでは、不要な土地の処分に困っているという方に向けて、おすすめの処分方法を紹介します。
不動産会社へ相談
まず検討したいのが、不動産会社への相談です。不動産会社に売却を依頼する場合、直接買い取ってもらう「買取」と、買主探しを依頼する「仲介」があります。
買取は条件が合えば比較的早く売却できますが、会社が利益や再販売の見込みを判断するため、買取価格は低くなりやすい傾向があります。仲介では希望に近い価格での売却を目指せる一方、買主が見つかるまでの期間は読めません。
国庫帰属制度を利用できない土地は、建物の解体が必要だったり、接道や管理に問題があったりするため、一般的な不動産会社には扱ってもらえないこともあります。その場合は、訳あり物件などを専門にしている不動産会社にも相談してみましょう。
自治体に寄付
土地を管轄している自治体が、寄付を受け入れてくれる場合もあります。公共施設用の用地など、自治体の事業に利用できる土地であれば、受け入れを検討してもらえる可能性があります。
ただし、自治体は土地の寄付を必ず受け入れてくれるわけではありません。自治体にとっても活用や管理が難しい土地は断られることもあります。自治体ごとに受け入れ基準や手続きが異なるため、まずは役所の土木課等に用途や条件を確認してみましょう。
相続放棄
まだ土地を相続していない場合、相続放棄という選択肢があります。家庭裁判所に相続放棄を申述して認められれば、初めから相続人でなかったものとみなされ、不要な土地を相続せずに済みます。
ただし、相続放棄では土地だけを選んで放棄することはできません。相続放棄をすると、預貯金や有価証券、ほかの不動産など、プラスの財産も含めて相続する権利を失います。
また、相続放棄は原則として、自分のために相続が始まったことを知ったときから3か月以内に行う必要があるため、注意しましょう。
有料引き取りサービス
売却先や寄付先が見つからない土地については、費用を支払って土地を引き取ってもらう有料引き取りサービスもおすすめの選択です。有料引き取り事業者は、不要な土地の引き取りのノウハウや活用方法を持っているため、国庫帰属制度の要件を満たさない土地でも相談できる場合があります。
引き取り費用は土地の状況や事業者によって異なりますが、将来の管理費や税負担と比較すると、費用をかけて手放した方が負担を抑えられるというケースもあります。不要な土地に困っている場合は、まずは無料相談を検討しましょう。
*もし買取が難しい場合でも、有料引取(処分費用が発生)など他の手段のご案内が可能です。
マッチングサービス
最近では、不動産の売買に売り手と買い手をつなぐマッチングサービスを利用する人も増えています。マッチングサービスを使えば、インターネット上で自由に土地の情報を公開できるため、不動産会社では買い手が見つからなかった土地でも、全国の買い手に向けて情報を発信できます。
売主が希望価格を設定できるため、購入希望者のニーズとマッチすれば、他の方法では処分できなかった土地でも、売却できる可能性があります。時間をかけても、希望の条件で土地を売却したいという方は、マッチングサービスの利用をおすすめします。
まとめ
相続土地国庫帰属制度は、不要な土地を国に引き取ってもらえる制度ですが、条件に該当しない場合は、利用できません。また、制度を使う場合は、審査手数料と負担金に加え、解体・撤去などにかかる費用も必要です。本記事も参考に、最適な選択かどうかを検討しましょう。
監修者
株式会社KLC 代表 小林 弘典
幼少期から不動産が大好きな、自他共に認める不動産マニア。
不動産会社でも手を出せない不動産の専門会社「株式会社KLC」代表を勤め、
自身のYoutubeチャンネル「相続の鉄人」にて、負動産問題について啓蒙活動も実施。
- 総務省 地方公共団体の経営・財務マネジメント強化事業登録アドバイザー
- 空き家等低利用不動産流通推進協議会 理事
- 立命館大学経済学部 客員講師
- 不動産有料引取業協議会 代表理事

