
不動産を放棄する方法とは?おすすめの処分方法と注意点を詳しく解説
相続等でいらない不動産を所有することになった場合、その不動産を放棄したいと考える方も多いことでしょう。田舎にあって管理できない不動産や、農地や山林など、活用が難しい不動産の場合、所有していても使い道がなく、税金や維持管理が負担となってしまいます。
本記事では、いらない不動産を放棄する方法や、放棄が出来なかった場合の処分方法、いらない不動産を所有する場合の注意点等、いらない不動産に対処するために役立つ情報を紹介します。
いらない不動産は、相続放棄で処分できる?

相続にいらない不動産が含まれており、まだ相続をしていない場合は、相続放棄が不動産の処分方法としては最も簡単です。しかし、相続放棄はいらない不動産だけを対象とすることができず、その他の財産も含めて放棄しなくてはいけない点に注意が必要です。
相続財産に現預金や株式等が含まれるなど、相続した方が得という場合は、一度相続をした後に、不動産を処分することをおすすめします。
不動産を相続放棄しても管理義務が残る?相続放棄の注意点とは!

不動産を相続放棄する場合、面倒な管理義務から逃れたいという動機で相続放棄をする方も多いと思います。しかし、状況によっては相続放棄をしても管理義務が残ってしまう場合があります。ここでは、いらない不動産を相続放棄する場合の注意点を紹介します。
申請期限がある
相続放棄には、申請期限があります。相続を知った日から三か月以内に相続放棄を行わない場合は、相続放棄はできなくなってしまいます。相続放棄を検討する場合は、期限を超えないよう注意して手続きを行うようにしましょう。
不動産の管理義務が残る場合がある
相続放棄をすると、不動産についての一切の権利を放棄することになるため、原則的には管理義務からも解放されます。しかし、例外的に管理義務が残ってしまうケースがあります。
たとえば、相続不動産に住んでいる、倉庫などで利用しているなど、不動産を占有しているとみなされた場合は、管理義務が残る場合があります。
第九百四十条 相続の放棄をした者は、その放棄の時に相続財産に属する財産を現に占有しているときは、相続人又は第九百五十二条第一項の相続財産の清算人に対して当該財産を引き渡すまでの間、自己の財産におけるのと同一の注意をもって、その財産を保存しなければならない。
いらない不動産の放置は危険?知っておきたいリスク3選

資産価値がなく、収益も生まないといった不動産を所有することになった場合、不動産を管理せずに放置する方も少なくありません。土地が田舎など遠方にあると、不動産を管理すること自体が困難というケースもあります。しかし、不動産を所有したまま放置することは、所有者にとって大きなリスクになる可能性があります。
税金、損害賠償を請求される
不動産を所有すると、様々な金銭的リスクを負うことになります。固定資産税は、不動産を所有している限り払い続ける必要があります。また、不動産を放置することで庭木が隣地に侵入したり、老朽化した建物が倒壊し通行人に被害を与えて、損害賠償を請求されるといった危険性も高まります。
対人トラブルが発生する
放置された不動産は、対人トラブルの原因となります。雑草が害虫や獣害の原因となり苦情をいれられる、土地が荒れて境界が曖昧になり、所有を巡って隣人とトラブルになるといったリスクが考えられます。また、不動産が処分されずに子や孫に受け継がれてしまうと、いらない土地の押し付け合いになり、家族や親族同士の争いの原因となってしまいます。
犯罪に巻き込まれる
不動産の管理をしないと、犯罪被害に遭う可能性があります。周囲から放置されていると思われた不動産は、不法投棄の標的になってしまうことがあります。また、放火や不審火、空き巣被害にあう可能性も高まります。最悪の場合、意図せず犯罪に利用され、巻き込まれてしまうことも考えられます。
いらない不動産を放棄するには?おすすめの処分方法5選

売却も難しく、賃貸等にも利用できないなど、いらない不動産を所有している場合、税金や維持管理の負担が重くのしかかるため、できるだけ早く処分することがおすすめです。ここでは、不動産を放棄するためにおすすめの方法をお伝えします。
自治体へ寄付
自治体によっては、不要な不動産の寄付を受付けている場合もあります。自治体に寄付をすることができれば、いらない不動産を無償で処分することができます。利用したい場合は、まずは役所の窓口に問い合わせてみましょう。ただし、寄付はすべての自治体で受け入れているわけではなく、利用できる土地は自治体でも再活用が可能なものに限られる点に注意しましょう。
相続土地国庫帰属制度
相続土地国庫帰属制度は、国が有償で不動産を引き取ってくれる制度です。2023年度から開始された制度で、相続または遺贈によって所有することになった不動産が対象となります。引き取ってくれる土地には条件があり、審査の結果不承認となっても審査手数料は返金されないため、利用を検討している場合は、最寄りの法務局に相談してみましょう。
近隣住民に譲渡
近隣住民と付き合いがある場合は、譲渡することもおすすめの処分方法です。近隣住民にとっては、土地がまとまることで価値が上がったり、活用の選択肢が広がるため、受け入れて貰える可能性が高い選択となります。近隣住民の連絡先がわからない場合は、法務局に手紙を出し、登記謄本を取得することで調べることができます。
引き取り業者へ依頼する
相続等で手にするいらない不動産の場合、自治体への寄付や相続土地国庫帰属制度を利用したくても、条件にあてはまらず利用できないといったケースも少なくありません。そんな時におすすめなのが専門の引き取り業者への依頼です。
引き取り業者は、活用のノウハウや知識を持っているため、その他の方法では処分できない土地であっても、引き取って貰える可能性があります。いらない不動産の税金や維持・管理に困っている場合は、まずは無料相談だけでも申し込んでみることをおすすめいたします。

マッチングサービスを利用する
最近では、不動産の取引でマッチングサービスを利用するという方も増えています。マッチングサービスを利用することで、不動産の情報を全国の買い手に向けて発信することができます。
マッチングサービスは、申し込みに関心が高い人が集まっているため、申し込みからの成約率が高いという特徴があります。買い手が見つかるまでに時間がかかる可能性もありますが、少しでも高い価格で不動産を手放したいという方には、マッチングサービスの利用がおすすめです。

よくある質問

不動産の放棄について、よくある質問をまとめました。
Q.相続等で所有することになったいらない土地でも、放棄はできない?
A.相続放棄をせず、不動産を所有することになった場合、放棄はできず、所有者が管理していく必要があります。
Q. 国や自治体になんとかしてもらえないのか?
A. 相続土地国庫帰属制度や、一部自治体での寄付の受付などはありますが、条件が厳しく、不動産会社にも売却を断られてしまうような土地の場合、引き取ってもらえない可能性が高いです。
Q. いらない土地がどうしても手放せない場合の対策は?
A. 現状では、そのまま所有し続けるか、引き取り業者に引き取ってもらうかといった選択が考えられます。固定資産税が高額だったり、別荘地などで管理費がかかる、土地が広く管理に手間がかかるなど、土地の所有にデメリットしかない場合、できるだけ早く手放すことをおすすめいたします。
まとめ
本記事では、不動産の放棄方法について解説しました。いらない不動産を所有することは、税金や維持管理の負担を負い続けることになります。不要な不動産を所有することになって困っているという方は、ぜひ本記事を参考にしてみてください。

株式会社KLC 代表 小林 弘典
幼少期から不動産が大好きな、自他共に認める不動産マニア。
不動産会社でも手を出せない不動産の専門会社「株式会社KLC」代表を勤め、
自身のYoutubeチャンネル「相続の鉄人」にて、負動産問題について啓蒙活動も実施。
- 総務省 地方公共団体の経営・財務マネジメント強化事業登録アドバイザー
- 空き家等低利用不動産流通推進協議会 理事
- 立命館大学経済学部 客員講師
- 不動産有料引取業協議会 代表理事