相続負動産の教科書

いらない別荘を相続したらどうする?不要な別荘を処分できる方法とは
相続負動産のキホン

いらない別荘を相続したらどうする?不要な別荘を処分できる方法とは

いらない別荘を相続などで所有することになってしまい、処分に困っているという方も多いのではないでしょうか。売却したり、賃貸にだすなどができればいいですが、そういった手段で活用できない場合、別荘は維持費や管理の手間がかかる「負動産」となってしまいます。

本記事では、そんないらない別荘でお困りの方のために、別荘と通常の住宅との違いや所有するリスク、売却が難しい場合に使える処分方法について解説します。別荘の処分にお困りの方は、ぜひ参考にしてみてください。

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別荘と通常の住宅の違い

別荘と通常の住宅の違い

別荘は、通常の住宅とは立地や用途が大きく異なります。別荘の多くは山間部や海沿いなどのリゾート地にあり、定住を目的としていないため、スーパーや病院などのインフラ施設が遠いことが一般的です。そのため、賃貸に出したり、売却することが通常の不動産より困難となります。

また、別荘は管理費や修繕積立金が高額になる、需要が限定的であるため、通常の住宅に比べて流動性が低く、売却したくても買い手がつきにくいといった特徴があります。法的には、住民票はおかない、税金面では住宅地用特例が使えず固定資産税が高くなるといった違いもあります。

相続などで別荘を所有した場合のリスクとは

相続などで別荘を所有した場合のリスクとは

利用する予定のない別荘を所有することになり、売却や賃貸などでも活用できない場合、どうしていいかわからず放置してしまうというケースは少なくありません。しかし、別荘を放置していると、金銭面や対人関係などで様々なリスクを抱えることになります。

維持・管理の負担

不動産を良好な状態に保つには、定期的な維持・管理が不可欠です。別荘は、常時人が住んでいるわけではないため、定期的な換気や清掃などを行わないと、急速に劣化していきます。管理会社に管理を頼んでいる場合は、その費用が必要となります。

最近では、管理会社と契約をしていなくても、管理会社の管轄する別荘地内にある場合は管理費の支払い義務があるとする判例もでています。

「管理会社の業務は、別荘地が存続する限り、その基本的な機能や質を確保するために必要なものであり、全ての土地所有者に利益を及ぼす。契約していない一部の所有者だけを利益の享受から排除することは困難な性質のものである。」

内幸町国際総合法律事務所「【最高裁判例】契約なしでも別荘の管理費は払うべき? 」―「不当利得」に関する新しい判断―

別荘を使わない場合でも、お金をかけて適切なメンテナンスを行わないと、資産価値が減少し処分がますます困難となります。

税金がかかる

活用していない別荘であっても、所有しているだけで毎年固定資産税が発生します。建物が古くなり建物の資産価値が下がったとしても、土地の固定資産税は課税され続けます。

また、地域によっては別荘所有者に独自の税金が課される場合や、住民票を置いていなくても、生活拠点とみなされると、住民税の支払いを求められる場合があります。

家族・親族間でのトラブルにつながる

活用が難しい別荘が相続の対象となった場合、家族や親族間でのトラブルの原因となります。売却もできず維持費がかかるだけの別荘は、相続人にとって負担でしかなく、家族、親族間で押し付け合いになることもあります。

別荘の場合、家族、親族間で共有名義になっている場合もありますが、そういったケースで相続が発生すると、権利関係がさらに複雑になり処分が困難になります。

犯罪に利用される

管理されていない別荘は、犯罪の温床になるリスクがあります。たとえば、不法投棄の標的にされたり、空き巣被害にあったり、放火のターゲットにされるなど、様々な犯罪に合う可能性があります。

また、最悪の場合は犯罪現場に利用されてしまい、警察から事情聴取を受けるなど、様々なリスクが高まります。

別荘のみの相続放棄はできる?

別荘のみの相続放棄はできる?

相続に不要な別荘が含まれる場合、別荘だけ相続放棄をして、預貯金など必要な財産は相続したいと考える方もいるでしょう。しかし、相続放棄はすべての財産を放棄する手続きであり、別荘だけを選んで放棄することはできません。

別荘を相続放棄しても管理義務がのこる場合がある

相続放棄をすれば、原則として別荘の管理義務からは解放されます。ただし、例外的に相続放棄を選んでも別荘の管理義務が残る場合があります。

たとえば、別荘を物置として利用して別荘を実質的に支配していた(占有していた)とみなされるケースや、自身の他に相続人がいない状況で相続放棄をした場合、放棄後でも管理責任を問われる場合があります。管理義務については、具体的な状況によって変わるため、該当する可能性がある場合は、弁護士等の専門家に相談してみましょう。

別荘を売却するためのポイントとは

別荘を売却するためのポイントとは

いらない別荘で困っているという方の中には、不動産会社に売却を依頼しているがなかなか買い手がつかないという方も多いことでしょう。しかし、売却が難しい別荘でも、ちょっとした工夫で売れる確率は大きく高まります。ここでは、別荘を売却しやすくするためのポイントを紹介します。

土地や建物を清掃しておく

土地や建物は、清掃して綺麗な状態にしておくことが大切です。別荘の場合、長年放置してしまって土地や建物が荒廃しているというケースも少なくありません。不動産を売却する場合に外観の印象は非常に重要です。庭に雑草が繁殖していたり、建物が傷んでいる、汚れているといった場合は、早急に対応しましょう。

売り出し中の別荘は、清掃や換気をまめに行い、綺麗にしておくことが重要です。土地や建物の外観を整えることで、買い手からの印象は大きく変わります。

複数の不動産会社に依頼する

別荘の売却は、依頼する不動産会社選びが非常に重要です。一般的な住宅を扱う不動産会社では、リゾート物件の扱いに慣れておらず、買い手にリーチできない場合があります。

そのため、別荘の取り扱いに強い地元の不動産会社や、リゾート物件を専門に扱う会社など、複数の会社に相談することをおすすめします。それぞれの会社の査定額や販売戦略を比較し、信頼できるパートナーを見つけることが、早期売却への近道となります。

パンフレットを作成しておく

物件の魅力を伝えるためのパンフレットなど資料を作成しておくのも効果的です。不動産会社が作成する販売図面だけでなく、実際に別荘を利用している様子などを写真などで伝え、魅力をアピールしましょう。

視覚的に別荘の魅力を表現することで、実際に利用した際のイメージを想像してもらい、別荘を利用するメリットを伝えることができます。

いらない別荘の処分方法とは

いらない別荘の処分方法とは

売却活動をして、買い手がつかない、また活用ができないといった場合、別荘を処分することは困難です。かといって別荘を放置するのは得策ではありません。ここでは、そんないらない別荘に使える処分方法を紹介します。

不動産会社に依頼する

いらない不動産を所有している場合は、まず不動産会社への売却依頼を検討しましょう。別荘の場合は、別荘などの物件を扱う専門の不動産会社に依頼する必要があります。

売却方法には、買取り、または仲介があります。買取りは不動産会社に直接買い取ってもらう方法ですぐに売却できますが買取価格が下がってしまう可能性があります。仲介は、不動産会社に買い手を探してもらうため、売却まで時間がかかりますが、希望価格に近い価格で売れる可能性があります。

隣人に譲渡する

不要な不動産は、隣人に譲渡するといった処分方法もあります。隣人にとっては、土地が広がることで活用の選択肢が増える、土地が広くなることで資産価値が向上するといったメリットがあります。

近隣住民の連絡先がわからない場合は、法務局で登記謄本を取得することで、住所を調べて手紙をだすといった方法で連絡することができます。

引き取りサービスを利用する

売却が難しい、またその他の方法でも処分ができない場合に使えるのが、不動産の引き取りサービスです。引き取りサービスの事業者は、いらない不動産を活用するためのノウハウや知識をもっているため、他の方法で断られて別荘であっても引き取って貰える可能性があります。

ただし、引き取りサービスはまだ整備されておらず、料金を支払ったのに名義を変えてくれない、他の投資詐欺に誘導するといった悪質な業者もいるため、依頼をする際は会社概要等をよく確認して、相談するようにしましょう。

マッチングサービスを利用する

最近では、不動産の取引にマッチングサービスを利用する人も増えています。マッチングサービスは、売りたい人と買いたい人を結び付けてくれるプラットホームです。不動産会社ではなかなか売れなかった別荘であっても、マッチングサービスを利用することで、隠れたニッチな需要にマッチする可能性があります。

いらない別荘に困っているという方は、まず無料登録だけでもしてみることをおすすめします。

まとめ

いらない別荘を所有し続けることは、金銭的・精神的な負担となるだけでなく、将来世代への「負の遺産」となってしまう可能性もあります。もしいらない別荘に困っているという方は、ぜひ本記事を参考にしてみてください。

監修者 監修者

株式会社KLC 代表 小林 弘典

幼少期から不動産が大好きな、自他共に認める不動産マニア。

不動産会社でも手を出せない不動産の専門会社「株式会社KLC」代表を勤め、
自身のYoutubeチャンネル「相続の鉄人」にて、負動産問題について啓蒙活動も実施。

  • 総務省 地方公共団体の経営・財務マネジメント強化事業登録アドバイザー
  • 空き家等低利用不動産流通推進協議会 理事
  • 立命館大学経済学部 客員講師
  • 不動産有料引取業協議会 代表理事

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